企業進出には人材面というのが一つの課題になってくるかと思いますが、いかがですか?

天野 眞也さん

おっしゃる通りで、地域での採用に力を入れておりますが、やはりまだまだ若い人が少ないですね。会津大学とも共同研究をしておりますが、会津大学に伺っても、やはり県内の方たちは基本的に都市部に流出してしまう。地元で就職しないということがあるようです。しかし、やり方次第では、人々が地元で就職する仕組みを実現することも可能と考えています。順にお話しすると、まず北関東・南東北にスマート工業団地を作ります。いわゆるエネルギーもデータ主導の工場の自律化も、しっかりとできた工業団地です。特に電源をスマート化するということが大事です。(ちなみに再生エネルギー電源は、太陽光とか風力もありますけれど、この地域は再エネにも力を入れています。)

さて今後、上場企業さんにとっては、SDGs、特にカーボンニュートラル(さらに、カーボンフットプリント、製品一つあたりの環境負荷)の対応が重要なテーマになることは自明です。そうすると、上場企業さんにとっては、「スマート工業団地では工場の稼働の電力は全部再生エネルギーで賄えます」と言われたらとても魅力的じゃないですか。これって、すごくいいブランディングになると思っているんです。皆さんは工業団地進出のプレゼン大会など、そんなに見られることはないと思うんですけれど、実は各県がやっているんです。みんな大体、人が優しいとか、高速道路から何分とかそんな話になってしまう。そういうことではなくて、やはり「スマート電源があります」とか「データを共有化するハイテク企業さんが集まってます」とか。例えば僕らはデジタルシミュレーションが得意ですが、そういったシミュレーション技術を使った効率的な提案を、県がサポートしますよとか。こういうDX人材のサポートだったり、こういうことが県をあげてやれたらすごくいいじゃないですか。そうしたら、企業も「そこに出よう」と当然なるわけですよね。
そうすると人材たちも、「やっぱりここで働きたい」ってなるわけですね。そういうことがこの地域でできたらいいなと思っているんです。

本来、日本が持っているブランドって、非常に強いものがあると思っていて。それは何かというと、「トヨタ自動車」とか「ソニー」とかの個社名ではなくて、僕は日本という国が持つ「安全・安心」だと思っているんです 極端な話、例えばタイで洪水が起こるとなると、日本の車は中古でもいいと。なぜなら水に浸かったときに壊れにくいということで非常に信頼が高いわけですよね。こういう安全・安心のブランドというのをもっと世界に発信していく。そうすると、このスマート工業団地があって、地域の学生たちもそのハイテク企業の周りでベンチャーを起こしやすいですし、そのベンチャーに対して投資ができるので金融機関も潤います。もっと言うと、行政も会社が増えて人が増えるので税収も上がるということにつながると思います。

ブランディングがしっかりできれば人材面も解決できるということでしょうか?

天野 眞也さん

その通りです。例えば、この福島、南相馬がスマートな工業団地をしっかりやって、今後の再生エネルギーあるいは最先端テクノロジー、ロボット、IoT、こういうAIがここにあるんだとなれば、皆さんここで勉強したいあるいは視察に来たいと。もう数万人が簡単に集まるんですよね。そうするとインバウンド人口がどんどん増えますから、近隣の飲食店も当然流行りますしね。

実はものづくりを中心としたハイテク、スマートなテクノロジー、こういったテックを中心にしていくと、実は日本ってすごくチャンスや可能性があると思っていて、そんな中でも、この我々がやっているファクトリー系の装置産業というのは、新たなる外貨獲得産業として非常に可能性があると感じています。

これからの日本の製造業は、従来のように世界中に工場を自分たちで出して、現地の人を雇って生産する方法ではなく、設備だけを出していくという方法に未来があると僕は思っています。例えばiPhoneみたいに、ハードとソフトウェアをプラットフォーム化して。ものづくりっていう部分で設備を輸出産業にしていくというのことが理想だと思っているんです。その中心地が、『ロボット』ブランディングが既に始まっているこの福島、あるいは東北で。「スマートファクトリーの輸出っていったら福島、東北だよね。世界中から人も来るし、日本中から集まってくるし」っていう、こういう町おこし。町おこしって言うとちょっと急に小さくなってしますけれど、こういうブランディングを出せたら人材が集まるだろうなと考えています。

エネルギーの地産地消やカーボンニュートラルの実現について、御社の取り組みについて教えてください。

天野 眞也さん

ロボコム・アンド・エフエイコム南相馬工場では、次世代製造業のモデルになるべく、次のような取り組みを行っています。まず基本的なことですけれど、太陽光パネルによって年間3,000トンぐらいのCO2の排出量の削減ができます。後は、EV等の充電設備。蓄電池などの導入も計画中です。

また、カーボンニュートラルに到達する前に、まず我々が実際どれぐらいの電力を、どこでどのタイミングで使っているのかをきちんと見える化することにも取り組んでいます。この工場では、照明一つ一つあるいは設備一台一台の電力使用量と、あと水、空気、廃棄物、そしていわゆる切り粉ですね。こういったものまで全てを管理できるような仕組みを構築中です。今、ちょうどそういったデータが整ってきており、これをベースに、電力使用量に対する代替のCO2がどれくらいなのかというのを割り出してもらう運びになっています。今はまだお客様に「一加工製品あたり環境負荷どれくらい?」といったことを聞かれることはないですが、聞かれれば答えられるシステムとハードは全部整えていくことができるようになります。

この仕組みまるごと我々は実現していますので、お客様から「同じシステムを下さい」と言われれば、そのまま提供できるような体制になっています。そういう意味では、もちろんニュートラルにしていくということは一番大事だと思うんですけども、それ以前に、カーボンフットプリント、製品単位あたりの定量的な環境負荷、これをちゃんと明示できるハードとソフトシステムが非常に大事になってくると思っています。

やり遂げようと思った強い想いはどういった辺りから生まれてきたんですか?

天野 眞也さん

小学校4年生ぐらいに震災を経験して、復興というのは、あんまり植物で関わることができないものじゃないかなって、そのときは思っていました。中学生とか高校生になるにつれて、自分も(植物を手段として)できることもあるんじゃないかなと思い始め、大学生のときに、ツツジを活用した街づくりをしようという考えに至りました。やるからにはちゃんと結果を残すというわけじゃないですけど、一人でも多くの人にそういう復興ということ自体の定義をみんなで作っていければいいなと。大学生になったときに何か行動しないといけないだろうなと思って