1中間貯蔵施設
参加者たちがまず訪れたのは、福島県内の除染作業で発生した除去土壌等を保管するための中間貯蔵施設。2015年から運用され、福島県の全59市町村のうち、52市町村から搬入が行われていました。多いときは、1日に10tトラック延べ3,000台が除去土壌等を運び込んで来ていたということです。
参加者たちは、施設担当者の方の説明を受けながら、除去土壌が置かれている現状や今後の処理の方針について知識を深めました。担当者からは「施設名に中間とついているように、ここが除去土壌の処理の最終地点ではありません。適切な管理のもとで保管された除去土壌を今後は福島県外に輸送し、最終処分していくことになります。これは福島だけの問題ではなく、全国の問題なのです。」と説明があり、参加者は目の前の光景を自分ごと化するように聞き入っていました。
また、東京電力福島第一原子力発電所の原子炉建屋や処理水タンクを遠望できる視察場所では、実際に事故が起きた現場を目の当たりにし、沈痛な面持ちで見学する参加者も多くいました。中間貯蔵工事情報センターでは、展示物に熱心に見入ったり、後から見返すために展示内容を写真に収めたりする方もいました。
参加者コメント
2東日本大震災・原子力災害伝承館
東日本大震災の記録を後世に伝えるための伝承館では、シアターで映像を鑑賞したのち、それぞれの参加者が館内を自由に見学しました。
2020年に完成したばかりの施設には、東日本大震災や福島第一原子力発電所の事故当時の緊迫した様子を伝える写真・映像や町に残された実物の被災資料などがテーマごとに展示されています。ライトアップされた写真や、カラーボールなどを使用して数字を視覚化し、分かりやすく理解できるようなど、さまざまな工夫が施された展示を、参加者たちはじっくりと見学していました。
震災後の写真とその状況を説明する解説文に足を止め、長時間見入っている参加者の姿も見られました。また、参加者同士で感想を話し合いながら、お互いに理解を深める場面もありました。
参加者コメント
3座談会@linkる大熊
ツアー初日の最後は、「いま私たちが福島について知り、伝えたい10のこと」をテーマに、各ツアーの参加者が合同で10のグループに分かれ、グループごとに1つの結論を出すという座談会が行われました。
第10班は、ツアーを企画、または参加してみてそれぞれが感じたこと、気がついたことを共有。それらを集約し、今の福島にはプラスマイナスの両面があるが、今後はよりプラスの面を押し出していく必要があるとまとめていました。
ゲストで参加した小島よしおさんからは、「伝えられた側も伝えたいという原動力を持つような伝え方、つなげ方が必要」とのアドバイスも。そのためにできることは何か、どう押し出すかと話し合いを進めていく中で、「福島で出会った人々がそうであったように自分たちも自分の地元を愛する気持ちをみんなが持てたら日本中がもっと良くなるのでは」という意見が。最終的に第10班は「福島を知り、地元と向き合おう」をテーマに発表しました。
グループごとに個性あるテーマが発表され、座談会は大いに盛り上がりました。若い世代が中心となってさまざまな意見を取り交わし、理解を深めていく。そんな光景が広がりました。
参加者コメント
4特定廃棄物埋立情報館「リプルンふくしま」
2日目は、特定廃棄物にフォーカスし、その現状を紹介する「リプルンふくしま」からツアーは再開。参加者たちは施設担当者の泉田賢一さんの説明を受けながら、廃棄物処理の方法に関する展示を見学しました。
展示内には、ジオラマに近づけると説明が現れるタブレットや、手元の模型の動きが画面内に反映される仕掛けなど、最新技術を使用したインタラクティブな展示が参加者を楽しませていました。また、処分されるまでの過程で使われるホースやシートや、最終的に土を収納する袋など実際のものに触れて学べる展示が数多くありました。
展示の見学後は、屋外に出て空間線量測定体験を実施。通常は地上1mあたりで測定するそうだが、その位置を変えたらどのように変化するか、どの程度の距離を取れば線量率が変化するのかなど、ツアー参加者が思い思いに条件を変えて実験。計測器の数も限られていたため、参加者同士がグループに分かれて助け合いながら実験を進めました。
参加者コメント
5双葉町産業交流センター
2日目の昼食は双葉町産業交流センターにて。参加者たちは自由に見学を行いました。
1階のフードコートでは、定食屋と「なみえ焼きそば」のお店が営業していて、参加者たちは地域の味わいに舌鼓。お土産もの売り場ではお買い物を楽しむ参加者もいました。
展望台からは、中間貯蔵施設、太平洋、元農地、事業所の立地が進む産業団地など、復興中の双葉町のさまざまな景色を見渡すことができ、これまでのツアーの内容に思いを馳せる参加者もいました。
参加者コメント
6バイオマスレジン福島
最新技術で、主に福島の米からバイオマスプラスチックをつくるバイオマスレジン福島。今回のツアーでは、バス内で1時間ほど講義を受けた後、10分ほど周辺の田んぼを散策しました。
担当のバイオマスレジンホールディングス中谷内美昭副社長は、この事業が成功した秘訣について、①国産のバイオマスプラスチックのライバルがいないこと ②原料を海外に依存しないこと ③海外からの輸送をしないので、二酸化炭素排出量が少ないこと ④他のバイオマス(サトウキビなど)プラスチックに比べて設備が小規模で済むこと ⑤日本人の米に対する親和性の高さの5つを要因として語りました。
米からつくるバイオマスプラスチック(ライスレジン)は、無駄になってしまう米の再利用や、活用されていない水田の活用など、地域課題の解決にもつながります。また、今後進む「カーボンニュートラル(脱炭素化)」の取り組みの中で、国内発の産業として重要な役割を果たすことも期待されています。
中谷内さんは、「今後はお米と人材の確保が鍵となる」とし、さらにこの技術を広めていくことが目標と参加者に伝えました。ツアー参加者たちからも、全く新しい技術の説明に活発な質問が寄せられるなど、高い関心が伺えました。
参加者コメント
7飯舘村長泥地区環境再生事業エリア
ツアーの最後は除去土壌を再生資材化し、再利用するための実証実験が行われている飯舘村長泥地区を見学。
現地では、パネル、ジオラマを見ながら現在行われているプロジェクトの概要を担当者から説明を受けるとともに、実際に除去土壌から再生資材を製造する過程や、盛土工事の現場見学も行いました。
再生資材を製造する施設では、搬入した除去土壌が入った大型土のう袋をベルトコンベアに載せて運び込み、その袋を強力な水圧で破いて中身の土壌を出します。土壌はその後、ふるいにかけて、異物等を取り除くなどの処理を施したあと、必要に応じて改質材を加えて調整することで再生資源化し、農地を造成するための盛土の資材として利用していました。
除去土壌の再生資材化も進み、盛土の工事も進捗しています。また、長泥地区にお住まいだった方が、栽培実験として、花の世話や水田試験等での作業の協力を交代でされています。その際に担当者がヒアリングをしながら、新しい飯舘村長泥地区のあり方について、意見を交わしているといいます。
除去土壌の再生利用というプロジェクトによって再生されつつある飯舘村長泥地区。色とりどりの花を咲かせる日は近いのかもしれません。
参加者コメント
原子力発電所の事故の現場や施設内に残された家などを見て、事故の具体的なイメージがつかめました。普段は不変に思える、その土地にあるものが簡単に変容してしまうことを実感しました。