1塩屋埼灯台
ツアーの最初に訪れたのは、いわき市の塩屋埼灯台。約120年前にこの地に建てられた歴史ある灯台で、全国に16しかない「のぼれる灯台」の1つです。ツアーの参加者たちはふもとから展望台に登りながら、福島の海を眺めていました。
灯台内にある資料展示室では、いわき市のマップや震災時の様子、灯台の仕組みなどが紹介されていて、初めて見る内容を興味深く見つめる参加者も多くいました。
以前は年間14万人ほどが訪れていた塩屋埼灯台ですが、現在は震災の影響もあり大きく減少しているといいます。それでも展望台から見える福島の海は、変わらずにそこで訪れる人を待っています。
参加者コメント
2三崎公園
次に訪れたのは、同じくいわき市内にある三崎公園。海上46mの台地に総面積70万km2の敷地が広がる福島県を代表するレジャースポットです。敷地内のいわきマリンタワーからは、いわき市一帯と太平洋を一望することができます。
広大な公園内には、海を見ながら移動できる自然遊歩道やピクニック広場、海上に向けて突き出た「潮見台」など、いわきの自然を堪能できるスポットがあり、参加者たちは自由に散策を楽しみました。
マリンタワーの2階の展示室には、マリンタワーのグッズや歴史、フォトコンテストの写真などが展示されていました。展望台へと登る階段には、いわきで獲れる魚や海水浴場など、いわきの海に関する展示もあり、ツアーの参加者たちは、福島・いわきの自然環境について知識を深めました。
参加者コメント
3海産物専門おのざき
ツアー初日の最後は、福島・いわきの水産物を扱うお店を見学。4代目の小野崎雄一さんに、店内と名物を紹介してもらった後、参加者は自由に買い物を楽しみました。
小野崎さんは、常磐沖で育ち、いわきで獲れる魚である「常磐もの」の魅力を解説。さまざまなステークホルダーからみた常磐ものの印象について、「水揚げ量が少ないため、高品質だが価格が高いという印象を持たれている」と話しました。また、「供給(漁師側)と小売側での認識のずれ」があるとし、処理水放出に対する風評被害に向き合い、常磐ものを広くPRしていくためには、お客さまや漁業者との対話を進めていく必要があると教えてくれました。
おのざきの看板商品である「厚揚げソフトかまぼこ」は、震災後も唯一残った製造ラインの商品で、現在も東京で販路拡大中といいます。そのほかにも津波の被害で廃業してしまった旅館で販売されていた「おびやす青のり佃煮」や、失われつつある食文化「煮凝り」をリブランディングした「金曜日の煮凝り」、その煮凝りに合うお酒を求め、岩手まで出向いて見つけたシードルなど、いわきの海の幸の魅力に触れることができました。
参加者コメント
4道の駅なみえ
2日目の朝に訪れたのは浪江町にある道の駅なみえ。食事やショッピング、酒造見学などが楽しめる人気のスポットです。
施設内では水素燃料電池による発電が行われており、照明や空調にも水素エネルギーが一部使用されています。ふくしま応援ポケモンの「ラッキー」をモチーフにしたラッキー公園の近くには、水素発電の力で沸かしたお湯が出る蛇口もありました。
現在では、スマートコミュニティの拠点&浪江のランドマーク的存在にもなっています。道の駅でも販売されているご当地グルメ「なみえ焼そば」は、昭和30年ごろに誕生した歴史ある一品です。
そんな道の駅の周辺にも、東日本大震災時には16.5mの津波が到達しました。バス内では、近所の請戸小学校に通う子どもたちが、迅速な対応によって奇跡的に全員無事避難できた様子が、震災当時の記憶としてバスガイドさんから語られました。
参加者コメント
5双葉町産業交流センター
昼食休憩は双葉町産業交流センターにて。各自自由に昼食を楽しみました。
センターの近くにはプライベートビーチのような海岸があります。
1階には震災記録誌や、建物の竣工記録など、さまざまな資料が展示されており、展望台からは中間貯蔵施設などを見渡すことができました。
6東日本大震災・原子力災害伝承館
2日目の午後は、東日本大震災の記憶を伝える伝承館の見学からスタート。
巨大なシアターやスクリーンを使用した映像展示や、震災の被害の大きさを物語る資料、福島に暮らす人々の生の声を集めた展示などを通して、福島と原子力発電所、そして東日本大震災との関わりを学びました。
展示を見たツアー参加者からは、「過去に三陸や気仙沼を訪ねたときの記憶が蘇りました。福島は地震の被害に加えて、原発の被害を受けていることを改めて学ぶことができ、他の東北の県と比べても被害が大きく、復興が遅れているのではと感じました」と語りました。
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故は、処理水の放出で懸念される風評など、福島の海にも大きな影響を今も与えています。その現実をしっかりと学び、今後に活かしていくことがこれからの日本を担う若い世代にとって必要です。それを学ぶことができた見学となりました。
参加者コメント
7中間貯蔵施設
福島県内の除染作業で発生した除去土壌等を保管するための中間貯蔵施設を見学しました。福島県内の59市町村の内、現在52で除染作業が完了しており、2021年度で、除去土壌等の輸送を概ね完了させるという目標も達成するなど、大きな転換期を迎えています。
敷地内にある町の特別養護老人ホームであった、サンライトおおくまでは、車や書類、パソコンが震災当時のまま残されています。この町で生活していた人のその後を想像し、福島の復興のために自分の大切な土地を国に提供した住民の方々の思いを感じ取りました。
敷地内に残るかつての町の様子に、ツアーの参加者たちは復興への長い道のりを感じ取っていました。
参加者コメント
8座談会@Linkる大熊
他のツアー参加者と合流し、ツアーメンバーをシャッフルして行われた座談会を実施。ゲストとしてお笑い芸人の小島よしおさんも参加し、参加者たちによる活発な議論が行われました。
第1班では、挙手制で各自の意見を発表しながら座談会は進行。「中間貯蔵施設や伝承館の見学を経て、原発関連の対応は福島県だけの問題ではないと感じた」という意見が出ると、環境省の職員であるアドバイザーからは「福島の原発で発電した電気は、福島県内では使っておらず、首都圏で使われていた。そのため福島県以外の人も当事者意識をもって考えなければいけない」と補足し、議論を深めました。
議論を進める中で、海産物専門おのざきの小野崎さんの若さ(26歳)に非常に驚いたという参加者が。震災の話を聞くとき、たいてい上の世代から聞くことが多かったので、同世代の方から聞けたのは非常に新鮮に感じたといいます。若い世代は今後長く福島を担っていく存在であり、また同世代の方の話はより身近に感じることができる。復興への取り組みや想いを世間話のように気軽に伝えていくことも大事なのではないか?という意見も上がりました。
それぞれのツアーで学んだことを持ち寄った座談会では、参加者の体験に沿ったさまざまな意見が交換され、盛況のうちに幕を閉じました。
参加者コメント
相馬の海は以前見たことがあり、岩でゴツゴツしている印象でした。今回のツアーで展望台から見たいわきの海は透明感があってきれいで、同じ福島でも見る場所によって印象が全然違うと感じました。