社名の「ねっか」の意味を教えてください。

脇坂 斉弘さん

福島の方言で「さすけねぇ」っていう言葉があるんですけど、「さすけねぇ」は「大丈夫」「問題ない」っていう意味なんです。それの最上級系がこの奥会津だけにありまして、それが「ねっか、さすけねぇ」なんです。「全然、大丈夫!」という意味で、「ねっか、さすけねぇ、全然、大丈夫だよ。これから頑張ろうよ」という意味を込めて「ねっか」という社名にしました。

只見にこだわって、次世代の子どもたちに何か引き継げる事業ということで、この会社を立ち上げたと伺いました。

脇坂 斉弘さん

只見では少子化と高齢化が進み、衰退が加速してしまうという強い危機感がある地域です。衰退は集落の荒廃とか田畑から始まります。まず、この田園風景を守っていくことが地域の未来につながっていくと思いました。米どころ会津でもありますので、とにかく田んぼを守っていかないと。田園風景を守っていくために何を作ればいいかということを考えると、同じ人、同じ機械でも広い面積を管理するため収穫時期を分けること。コシヒカリ単一品種ではなくて、コシヒカリよりも早く収穫できる品種ということで、農家さんは酒米に目をつけました。ただ酒米も作れば買ってもらえるというものではない。当然、使うところがあって初めて需要と供給のバランスが成り立つ。じゃあ、自分たちで酒蔵を造った方がいいんじゃないかと。そして酒蔵は冬の仕事が中心で、このあたりは、3メートルぐらい雪が積もる地域で、冬の仕事ができることで通年の雇用が生み出せるんじゃないかっていうことで酒蔵を立ち上げました。

只見での米作りにこだわっているとお聞きしました。

脇坂 斉弘さん

そうですね。弊社も農家になりまして7ヘクタールの田んぼを管理させていただいています。私たち「ねっか」は、農業者の集まりです。今までそれぞれ個人や農業法人としてやられた方との横のつながりが生まれ、今6農家、うちの役員プラス1農家で「只見ブランド米協議会」を立ち上げて、JGAPの取得に取り組んだり、米のブランド化等にも取り組んでいます。酒米だけでなく、一般のコシヒカリへと生産も広げ、より強い絆のもと、この地域の田んぼをみんなで守っていこうと思っています。

他にこだわっていることはありますか?

脇坂 斉弘さん

福島県の日本酒の醸造技術を用いた「吟醸」、この香り豊かな焼酎がうちの特徴になります。「ねっか用酵母」というねっか専用の酵母を使っているのもこだわりの一つです。超低温で蒸留しているのでいい香りのお酒ができるんです。一方で、小さな機械を使っているのでコストがかかるんですよね。それもあって、自分たちで米作りをしてコストを削減しています。米作りができる環境にあるからこそできる酒造り。雪が深いからこそ農家さんたちと一緒に酒造りができる。ここ只見だからこそできる酒造りにこだわっています。

自然環境にも配慮した酒造りとお聞きしましたが?

脇坂 斉弘さん

この地域は、尾瀬のブナを原生林として始まっている水系なんです。GAP認証を取っているので、残留農薬とかも含め生態系という部分もチェックしないといけない。そのうえ、只見は「ユネスコエコパーク」に認定された地域なので、農薬を撒くといなくなるトンボがいたり、カエルがいたりするんですよ。うちの田んぼは、当たり前ですけど上流に人が住んでない。本当にブナの原生林から流れたお水をそのまま、田んぼに使っています。酒造りだけではなくて、米づくりの田んぼの段階から、環境への配慮はもう始まっているんです。