ワークショップの取り組みでは、どのようなことに苦労されましたか?

原先生

ワークショップに参加した生徒たちからは、『すべての生徒にこのような学びの場を与えてほしい』と毎回言われます。私もたくさんの学校にこのワークショップのような取り組みを知っていただけると良いと考えていました。しかし残念ながらそのような動きが多く出てきたとは言えませんし、福島の現状を正確に学ぶ場を生徒に提供するような動きには至っていません。また『福島の現状を』と言う時、原発の賛否と結びつける傾向にありますが、大切なのはそこではなく、震災や原発事故を正確に学ぶ場を設けることだと思います。ぜひ多くの生徒たちに学びの場を設けてほしいと思っています

ワークショップの取り組みで、印象に残ったエピソードがあれば教えてください。

原先生

特に事故直後に中高生ぐらいだった子どもたちは、報道やニュースで見ていますよね。だから、その先というのを強く意識しています。でも、今の子どもたちは同じ高校生ですけれど、3.11の時は小学校低学年か幼稚園児。ですから、ニュースを見てもピンとこない。課題意識を最初からは持っていない感じがします。ワークショップに参加していく過程で、課題意識を持つようになっていくんです

お二人からみた、福島県の復興、そして環境再生の状況はどうですか?

菅野理事

ハード面からみれば十分に進んでいるし、環境再生の状況については帰還困難区域も減ってきているとは思います。一方で、ソフト面というか避難されている方の心の復興というのはまだ全然、一歩も進んでない感じがします

原先生

私はハード面に関しても、もうちょっと早く進んでもいいかなと感じる部分もあるんです。国や自治体は非常に慎重に事を進めているなと、ワークショップをやっていて感じました。地域、地域でいろんな課題にきちんと向き合って、一つ一つ解決しながら非常に丁寧にされているような印象なんですけれど、担当されている方の緊張感とか、そういうものがもっと知れ渡ることによって、もう少し進んでもいいのかなと思うところもあります。一方で、教育の部分では、ちょっと考える必要があるような気がしています。学びの場を提供するたびに、生徒たちには『どうしてこういう場を県内の高校生が全員学べるようにすることができないのか?』って言われてしまうので…。ここはやはり、なんとかしたいなとは思っています

今後のご予定や計画を教えてください。

菅野理事

原先生がやっている高校生のワークショップ。これは続く限り応援していきたいと考えています。ただカタチは変えていかないと。今の高校生たちは原発事故当時、幼稚園児だったので、物心がついたとき普通に事故後の福島を見ている。その辺も含めて、今後私たちもどうお手伝いをしていけばよいのか模索しています。ドリームサポート福島としては、農産物の魅力の発信はもちろん続けていきたいと思っていますが、避難されてきた方たちと直接お話をすることによってソフト面で寄り添っていく必要性というのをすごく感じているので、今後は心の復興にも注力していきたいですね

これからの福島に向けて、今のお気持ちを教えてください。

菅野理事

一次情報をきちんと自分で調べて、自分の中で咀嚼して、自分なりに考えてアウトプットすることの大事さを、福島県民一人一人にやってほしいなと思っています。主観的ではなく、事実を客観的に見て、伝えることによって風評被害もなくなるでしょう

原先生

3.11の後、『福島を何とかしたい』と県外海外から多くの方が福島に心を寄せてくださった。ワークショップはそんな方々のお力添えで実施することができました。ワークショップを応援してくださった全ての方々に、心からありがとうを伝えたい。皆さんが播いてくださった復興の種は、生徒たちの中に確実に芽を出し始めています。きっと将来福島の復興を進めてくれるでしょう。そんな彼らに期待込めたいです。