福島県双葉町の中野地区復興産業拠点に位置する「東日本大震災・原子力災害伝承館」。文字通り、福島が経験した震災、津波、原子力災害という未曾有の複合災害の記録と記憶、教訓を後世に伝えるための施設です。昨年の4月から伝承館スタッフとしてあらたに加わった、いわき市出身の遠藤さんと、南相馬市出身の渡邉さん。ともに現在19歳、震災当時は小学3年生でした。就職の動機について、お二人が異口同音に語ってくれたのは「福島を、その被災の経験を、自分自身で語り継いでいきたい」ということ。そのために「伝承館で伝えられること、伝えていくべきことについて、もっと勉強していきたい」。

「震災を決して風化させてはならない」と語るお二人ですが、たいせつなものは、過去の記憶だけではなく、これからの福島への思い。「もちろん震災はとても辛い出来事でしたが、福島を考えるきっかけになりました」と渡邉さん。「福島には温かい心、人と人との結びつき、乗り越える力があります」。それが次の福島につながるとも。「食べ物に関わる風評被害などを目の当たりにすると、『福島についてもっと発信しなければ』との思いが強まります」と遠藤さん。「福島はもともと豊かな自然の土地。その自然に恵まれた環境を新しい福島のきっかけにできないか」という具体的なアイディアも。「復興はいまだ半ば。ただその変化の中にいて未来を共にできることは幸せ」。「福島といえば、今もなお『地震のあったところ』との見方をされる。そうじゃない福島を見せたい」。

そんなお二人の言葉の中には、新しい福島への歩みを進める強い意志がありました。