まず、御社の設立の経緯について教えてください。
谷口 豪樹さん
もともと埼玉でサラリーマンをしていました。奥さんの実家が川俣町の山木屋にありまして、震災の時、福島で復興に関わる何かをしたいと思っていたのですが、義父の農業を手伝ったとき「これだ」って思ったんです。それから川俣町に移住して手伝い始めたのですが、逆に気を使わせていると感じたんです。(農業の)ベテランになればなるほど、全部自分でできちゃう。手伝うのは「ちょっと違うな」と感じて、独立しました。
当時、一部避難地域だった場所もありましたが、町内に土地を借りて農業を開始。今年(令和6年)で6年目です。会社を設立したのが2021年の7月1日、約3年前に創業しました。
現在展開している事業を教えてください。
谷口 豪樹さん
一番はまず花卉で、「アンスリウム」というお花です。後は季節に合わせて「ヒマワリ」や「ストック」というお花ですね。また、観光農園のイチゴ狩りもやっています。イチゴは苗自体も生産していて全国に出荷しています。それにお米も作っています。また、町からの委託で体験農園の運営管理もしています。他にも6次化で自分のところでイチゴとかトマトを加工してキッチンカーで販売したり、いろいろしています。だからいま、自分では「実農家」って言っています。
3年前、日本一の生産量になった「かわまたアンスリウム」の誕生秘話をお聞かせください。
谷口 豪樹さん
このお花と知り合ったキッカケは、土壌汚染の風評被害を払拭させようというプロジェクトでした。「“オール近大”川俣町復興支援プロジェクト」と言うんですが、土壌の代わりに古着のポリエステルをリサイクルした「ポリエステル媒地」という服の繊維に肥料を混ぜてアンスリウムを栽培しようという試みです。その時、町内の11軒の農家がプロジェクトの応募に手を挙げました。僕もその一人。風評被害の払拭という目的もあったんですけど、リサイクルしたものを活用すると聞いて、かっこ良さというか、何か新しい可能性を感じたんですよね。
ポリエステルを再利用した「ポリエステル媒地」。土の代わりに活用されている。
現在ではブランド化に成功して、生産量も日本一になったわけですがご苦労もあったと思いますが。
谷口 豪樹さん
ポリエステル媒地を使った試験というのが、まだできて間もないということもあり、成果がよくわからなかった。それでみんなで協力しながら、試行錯誤して育てて来ました。初めは1軒の農家がモデルケースになって、それから11軒の農家で組合を設立し、現在は1軒増えて12軒ですが試行錯誤しながらここまで来ました。ハウスの温度管理や熱帯性の植物なのに太陽に弱かったり、本当に繊細な植物なんですよ。
また、ブランド化に当たっては東京の太田市場やメディアでの普及・啓蒙活動もしました。ライバルは海外からの輸入品になるので台風などに影響を受けずらい安定供給などもアピールしました。
今はブランドとなっている「かわまたアンスリウム」。